何も誇れぬ人生の記録

『ぼくは何も誇れないのが誇りだな』沼田真佑、影裏より

沼田真佑『影裏』

素晴らしい作品でした。

この硬くて澄んだ描写は一周回って素人くさい感じを出しているのだけど、明らかに何か描かれるべきものを描いている。

それは僕が、十代の頃から感じていて今では忘れ切っていて、得体のしれない憂鬱になって漂うしかなかったようなもの。

日浅の『おれは誇れるものがないことが誇りだけどな』という言葉が美しい。こんなことをいう男を壊したらいけない。

どうしての僕らは壊れていくのだろう。何が僕らを壊したんだ。その怒りを主人公と共有できた気がした。