何も誇れぬ人生の記録

『ぼくは何も誇れないのが誇りだな』沼田真佑、影裏より

読書会

アガサクリスティー, 春にして君を離れ, 1944

書き出し: ジョーン・スカダモアは目を細めて、鉄道宿泊所の食堂の薄暗がりをすかすようにした。いささか近視の気味だった。 「あれはたしかーーでもまさか、そんなはずはーーいえ、やっぱりそうだわ、ブランチ・ハガードに違いないわ」 何て奇妙なーーとこ…

反省202211

・フリートークの時にちょっとお腹の調子が悪くなってガチガチになって、神経過敏の症状が出てしまった。 こうなると意識しても抗い難くて、黙り込んでしまったり、急に緊張が極まって泣き出してしまったりする。 自意識の過剰という社交上のモラルの面での…

言語・真理・論理 第六章

倫理学と神学との批判 倫理的価値についての命題は経験的命題ではない。 1 我々は、「全ての(事実内容を含む)総合的命題は(過去の経験から未来の経験を予測するに役立つような)経験的な仮説である」と主張する。しかしこれには(倫理学者からの)反駁がある。…

言語・真理・論理 第五章

真理と確からしさ 1-14 真理の理論とは、単に命題の有効性を判断する基準を決める理論である。ある命題が真か偽かというときの、真偽それ自体は実在的な概念ではない。真理というのがそういう風にそれ自体で何か実体を持っているように見えるのは、命題を述…

言語・真理・論理 第四章

ア・プリオリなもの ア・プリオリな命題は論理と数学に関する命題である。ア・プリオリに有効性が認められるということは、同語反復であることと同値である。このようなア・プリオリな命題があると認めることは経験論と全く矛盾しない。なぜなら、このような…

言語・真理・論理 第三章

哲学的分析の本質 哲学的分析とは陳述の、特に定義の、言語学的な観察であると前章で規定した。ここで、言語の構造の分析とは、まずその言語の中にある有意味な陳述を洗いざらいピックアップして、次にその中で同じ意味を表す陳述同士を結んでいくことである…

言語・真理・論理 第二章

哲学の機能 哲学の仕事とは陳述の明晰化と分析のみである。ここでの分析とは陳述の言語学的な意味の観察であり、特に定義の問題の分析である。ゆえに哲学は経験科学一般とは競合しない。議論においては定義についての命題を事実的命題と取り違えないよう注意…

エイヤー著 言語・真理・論理 第一章

哲学の体系を、自分のなかにいかにして作り上げるかの指針を与える。以下のステップが提案される: (1) 陳述を分析的命題、経験的命題、ナンセンスに分類する。 問題点: 同語反復でも弱い意味で原理的検証可能でもない陳述がナンセンス、とあるが実際に判別す…

フロベールの文体について

フロベール(1821--1880)のボヴァリー夫人(1857)を、同時期に書かれた書簡集も読みながら、彼の言う文体とは何なのかを意識しつつ再読している。 この作品の動機は、紋切り型の描写とリアルで皮肉な描写によって、彼がそれこそが描くべきものだと信じた、『も…

ポール・オースター著『ガラスの街』 断片的な物語の中の実存

1 プロット この作品は13の章からなり、その前半のプロットは概ね典型的な探偵小説の形をとっている。各章の概略は以下の通り:1. 探偵への依頼の電話 2. 依頼主との接触3. 依頼主側の関係者との対話4. 事件と関連する出来事の回想5. アイテムの入手6. ターゲ…