何も誇れぬ人生の記録

『ぼくは何も誇れないのが誇りだな』沼田真佑、影裏より

作品

物語というのは厄介な物で、それがどんなにくだらなかろうとそいつを考え付いた当の本人がどこかでそれを表現しないかぎり、いつまでも心の中でくすぶって煮え切らない感情を残していく。この嫌なしがらみから抜け出すには物語を何らかの方法で外に出すしか…

好きでした

僕はひどい肩こりだ。腰にも違和感がある。これは僕の持病だ。十九からこうなんだ。これさえなければ僕の人生もっと高いところへ行けてたんじゃないか、こんなに鬱々とした日々を歩む羽目にはならなかったんじゃないかと本気で思っている。 大学一年の時にど…

ブロックした友人と拾わなかった銃の化身が駐車場でポルノを観ていた

考えというのはなかなか自由にならないもので、文体も言葉も望んでもありふれたものしか浮かばなかった。殴り書きしているつもりでいても、裸でいるつもりでも、どうしても僕はちゃんと服を着てちゃんとした言葉遣いで物を考えようと、意識せずともそうなっ…

僕は信じていません

信じられなかった。もう少し肯定的に言い直すと、本当に信じていたものは別のものだった。 このことが僕を「状況の奴隷」にしていた。 信じられないので、達成できない。何か少し出来てもすぐに無意味がわかったので、ただ自己否定をひとに伝えた。 そうして…

駅前通り

遠い世界に行きたいと願うとき、何から始めればよいのだろうか。 目的なしに降りた駅にはマクドナルドもなかった。日差しを避けて高架橋下に潜り込んだ。小さな蕎麦屋があった。メニューはかけそばと山菜そばしかなく、金欠だった僕はかけそばを注文せざるを…

砂虫

黒い土が盛り上がったところに、不思議な日陰ができていた。私はその日陰の形があまりに気がかりだったので、誰かにどうしても見せなければと思い、人をよびに飛び出た。 午後の往来の日差しはまだ強くて、立ち上がり木陰から出た途端に急な吐き気が催した。…

水の記憶

声無き声を聞いてほしい。 冷静な考えが浮かぶ前に。 我らの本能がこだまするあの本殿の中へ。 忘れてきたものは沢山あった。 きっと僕らはそれでも蘇る。 まだ残る香りがそこへ届けてくれるだろう。 理解の前に欲しいものがあって、満たされないと知るとき…

いつもの踏切

僕の人生の中で大切なものなどそう多くはない。この前から実家にいるのだが、その時にローラーバッグとリュックに入れて持ってきたわずかな本や日用品、それくらいで十分だと断言できる。いや、学問に対する向上心をほとんど失ってしまった今ではその本すら…

ふりをして生きていく

生きることは誰がなんと言おうとこの現実を強制されることだ。この生きることの強制に従えない存在に居場所は与えられない。故に我々はどうしても従えないと感じているとしても、最低でも従っているふりだけはして生きていくことになる。 そもそも自分は論理…