何も誇れぬ人生の記録

『ぼくは何も誇れないのが誇りだな』沼田真佑、影裏より

読書記録

現代文の試験問題の解き方

段階一 トピックセンテンスとそのサポート文を意識しつつ、順接、逆説、説明のディスコースマーカーに注意しながら全体の論旨を把握する。 段階二 設問ごとの解答のポイントを箇条書して、その箇条書きをまとめる形で解答を作成する。各ポイントは基本的には…

アガサクリスティー, 春にして君を離れ, 1944

書き出し: ジョーン・スカダモアは目を細めて、鉄道宿泊所の食堂の薄暗がりをすかすようにした。いささか近視の気味だった。 「あれはたしかーーでもまさか、そんなはずはーーいえ、やっぱりそうだわ、ブランチ・ハガードに違いないわ」 何て奇妙なーーとこ…

論理ノート(1)

論理ノート、マキナニー著より抜粋 読書会でエイヤーを読んだ後だったので、その時に考えたことの復習になりました。 意志を効果的に伝えるための5つのルール 1)明確に説明していないのに、聞き手があなたの言いたいことを理解できたと決めつけない 2)完…

小説入門 保坂和志

書きあぐねている人のための小説入門 風景を書く ストーリーとは何か 以外。

柴崎友香 きょうのできごと 『レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー』 光で、目が覚めた。 右側から白い光が射してて、中沢が窓を開けて少し身を乗り出すのが黒い影で見えた。 (あらすじ) 小説は力まずに自分の頭の中の言葉を書けばいいのではない…

赤染晶子 うつつ・うらら 「わて、実はパリジェンヌですねん」 マドモアゼル鶴子は昭和四十二年からずっとこんなことを言っている。 (はじめ) うつつうららな観客の視点に立つ描写が展開する。街から重いぬるま湯が重い扉が空く度に流れ込んできて停滞してい…

島口大樹 鳥がぼくらは祈り、(はじめ)あえて後から壊したような文体。ぼく、高島、あと二人の四人の物語。家族で僕の2歳の映像を観る場面から始まる。ビデオの中の今と語られているシーンの今とかたっている今のあえての混濁がある。この混濁は時間や文体だ…

大島真寿美 戦友の恋(はじめ)非常に面白い。漫画の原作者である主人公さきに久美子は私達友達じゃないんだよね、という。その逸話から二人で飲み歩いた出来ごとが回想され、自然な流れで出会いの場面に行く。さきは漫画家を目指す新人で久美子は新人編集者。…

辻原登 Yの木(はじめ)独り身で団地に住む男がペットの犬を散歩に連れ出すシーン。その途中にYの形の木がある。今までは気にもとめていなかったが、妻がなくなってから気になっている。その犬との出会いが回想される。(おわり)59歳で自決したある男を回想しな…

石井遊佳 百年泥(はじめ)題名の由来が書き出しのいち文で語られる。洪水の場面から。家でニュースと窓の外の様子を見ながらここにいる経緯を回想。主人公は男運がなく、流れされてチェンナイの日本語教師となった。(おわり)最後は感傷、盛り上がりの裏切り。…

赤川次郎 血と薔薇 (はじめ) 最初の数段落で登場人物とその関係性が鮮やかに紹介されるのは見事でした。 (おわり) ひとだんらくと思ったろころで、女のあれっとなるセリフ。無理心中させられたことに気づいて終わる。ホラー。 青山文平 飛ぶ男 (はじめ) 舞台…

平野啓一郎の小説の読み方

序章の解説が非常に興味深い。ちょうど偏執的に国文法の復習をしていたので、小説のプロット自体を文法に立ち返って分析していくアプローチに惹かれた。主語と述語の連続が物語を紡いでいくのであり、その流れは文章という制約上一本でしかないということに…

杳子という抽象小説(抽象の逆説的なリアル)

この小説の力に昨日は気づけなかったが、今日も読み進めるうちに、これが官能小説よりもより根源的に官能を描写している小説であると感じてきた。 やはり、男と女や内面と外面といった抽象的な形のままでここまでリアルにそれ自体を描写できるというのは凄い…