何も誇れぬ人生の記録

『ぼくは何も誇れないのが誇りだな』沼田真佑、影裏より

大島真寿美 戦友の恋
(はじめ)
非常に面白い。漫画の原作者である主人公さきに久美子は私達友達じゃないんだよね、という。その逸話から二人で飲み歩いた出来ごとが回想され、自然な流れで出会いの場面に行く。さきは漫画家を目指す新人で久美子は新人編集者。二人は手を組む。
(おわり)
急逝した久美子の元彼のムスコわたるくんとリズというライブバーで会う。わたるくんが会いたいと言ったという。彼が久美子のことを語る。二人で久美子らしさを思い出して、生前の久美子を偲ぶ。友達という関係についての二重の物語。鉤括弧のない文章、文法的にあえて引っかかる文に文体の工夫がある。