何も誇れぬ人生の記録

『ぼくは何も誇れないのが誇りだな』沼田真佑、影裏より

アガサクリスティー, 春にして君を離れ, 1944

書き出し:

 ジョーン・スカダモアは目を細めて、鉄道宿泊所の食堂の薄暗がりをすかすようにした。いささか近視の気味だった。

「あれはたしかーーでもまさか、そんなはずはーーいえ、やっぱりそうだわ、ブランチ・ハガードに違いないわ」

 何て奇妙なーーところもあろうにこんな辺鄙な土地で、何年もーーそう、十五年近くも会ったことのない学校友だちと出会うなんて。

 はじめジョーンは単純に喜んだ。もともとつきあいのいいたちで、友だちや知人と顔を合わせるのはいつでも大歓迎だったのだ。

 それにしてもまあ、気の毒にあの人のかわったことーーと彼女は思ったーーひどく老けて見えるわ、年よりかずっと。どう考えても、四十八歳以上ってことはないはずなのに。

 

感想:

p25 (人生の罪)

罪ばかり犯してきた女性ブランチと罪を全く犯してこなかった女性ジョーンの対話。これから彼女が自分の考えたことのなかった罪と向き合うことが暗示される。

p51(自分の未来を決める勇気)

ロドニーは最終的にジョーンに自分の人生を決断してもらう。あとがきにもあるように、彼には自分の未来を決断する力がない。「勇気がない」誰にもわからないものの筆頭が自分の未来だから、未来を決めることは一番勇気がいる。ここで不思議と、他人の未来を決めたり、他人の言葉で未来を決めるのは案外楽容易いのかもしれない。

p82(なんでレスリーは科学ネタを突然入れてくるの?)

レスリーの可愛らしい点

p86(愛情が冷める時)

相手のことを無意識に自分より下の動物に例えてしまう?これは、エピローグのp323のロドニーからジョーンをみた目線でも同じ。

p87(急に生き生きとするロドニーの背中)

p99(レスリーの持つ勇気とは)

ロドニーが惹かれるもの。

p102(最も美しい情景)

夕日を前に、少し離れて腰掛けるレスリーとロドニー。

p150(好きな人と自分を重ねて言う言葉)

それからレスリーの勇気が現れているシーン

そして、エイヴィラルとロドニーの対決。