何も誇れぬ人生の記録

『ぼくは何も誇れないのが誇りだな』沼田真佑、影裏より

2022-11-21から1日間の記事一覧

吸いさしの煙が名残惜しく漂う暗がりで、細い影が頻りに骨ばった右手を上下させている。その行為の振動で、歪な丸テーブルは小刻みに揺れていた。周囲に物音ひとつないことに安心しきって、動きは大胆になっていく。端の皮が捲れた口元からよだれが垂れて、…

言語・真理・論理 第三章

哲学的分析の本質 哲学的分析とは陳述の、特に定義の、言語学的な観察であると前章で規定した。ここで、言語の構造の分析とは、まずその言語の中にある有意味な陳述を洗いざらいピックアップして、次にその中で同じ意味を表す陳述同士を結んでいくことである…

赤染晶子 うつつ・うらら 「わて、実はパリジェンヌですねん」 マドモアゼル鶴子は昭和四十二年からずっとこんなことを言っている。 (はじめ) うつつうららな観客の視点に立つ描写が展開する。街から重いぬるま湯が重い扉が空く度に流れ込んできて停滞してい…